湯船につかる文化がないことで有名な沖縄では、街の中を歩いてみても、銭湯の看板を見かけることはありません。「庶民の憩いの場である銭湯が沖縄にないってこと?」その謎を、今から解いていきます。
沖縄の銭湯「ゆーふるやー」とは
沖縄では、銭湯のことを「ゆーふるやー」と呼びます。
もともとアメリカ文化が根強い沖縄では、湯船につかるという風習がないため、今でも自宅に湯船がない家や賃貸アパートなどが数多くあります。そんな沖縄のゆーふるやーには、本土とは全く違う独自の文化があります。
本当に沖縄には銭湯がないの?
かつては、沖縄県内に300件以上も銭湯がありました。私が沖縄に移住してきたばかりの20年前は、那覇市内でも数か所、営業している銭湯があり、何度もお世話になりました。
でも最近では、銭湯の看板を見たことがないという人も多いかもしれません。
それもそのはずです。那覇市内で最後の1件となってしまった「日の出湯」も、惜しまれながら、2014年5月に廃業。これをもって、私の沖縄・銭湯生活も終わりを告げました。
県内最後の銭湯・中乃湯
諦めるのはまだ早い!実は沖縄では、沖縄市にまだ1件だけ営業している銭湯があります。
それが、「中乃湯」。
激戦区だった那覇市で最後まで頑張っていた日の出湯が廃業している今、「中乃湯」は、県内で現存する最後の銭湯であり、日本最南端の銭湯ということになります。
沖縄の銭湯は、脱衣所と洗い場の仕切りがない
沖縄の銭湯は、脱衣所と洗い場の仕切りがありません。ですから、本土出身者が沖縄式の銭湯に入ると、以下のような感じになります。
脱衣所の場所を探す
私も、沖縄の先頭に最初に入った時、とっても戸惑いました。だって、番台のわきを抜け、扉を開けると、いきなり浴槽が見えるのです。それも、なぜか浴槽がど真ん中に…。
「え?まだ服脱いでないけど?なんで?」
もう一度扉を開け番台に戻り、勇気を出して再びチャレンジします。ここで初めて意味が分かります。
浴槽の隣に棚があり、そこが脱衣所。だから、番台のすぐ横の扉を開けたら、さっさと服を脱がなければいけないのです。
銭湯独特の湯気が漂ってない
銭湯と言ったら、壁一面に大きな富士山などが書かれているのをイメージしますよね?
そして、その壁画の真横に、大きな浴槽があって、いつでも湯気が漂っている、あのイメージです。でも、沖縄の銭湯では、いずれも当てはまりません。
壁一面に窓があり、基本的には常に視界がクリアです。浴槽のお湯は温かいですが、「熱い」と感じるものではありません。
沖縄の銭湯の浴槽は小さいです
沖縄の銭湯の場合、浴槽を「池」と呼びます。私がかつて通っていた那覇市の日の出湯もそうでしたが、中乃湯の浴槽も、こじんまりとした円形のお風呂です。
そして、なぜか、浴槽が浴室のど真ん中にセットされています。
最初は、この光景に戸惑ったことを思い出します。ああ、懐かしい…。
沖縄古来の銭湯を楽しむと思って立ち寄ってほしい
「銭湯とはこういうもの」という確固たるイメージで中之湯に行くと、必ずがっかりします。はっきり言っておきますが、本土出身者がイメージしているような銭湯と中乃湯は、全く違います。
でも、浴槽に浸かる文化のなかった沖縄で作られた「琉球式銭湯」を体験するとおもえば、どれをとっても新鮮な体験で実にユニークです。沖縄で現存する最後の銭湯、中乃湯。
しかもこの中乃湯が、琉球式銭湯を体験することができる唯一の場所。旅の思い出に、ぜひ立ち寄ってみてくださいね。
中乃湯
- 住所:沖縄県沖縄市安慶田1-5-2
- 営業時間:14:00~20:00
- 入浴料:370円