沖縄の「門中(むんちゅう)」とは?

シーサー

沖縄では「門中(むんちゅう)」と呼ばれる一族のつながりが今も大切にされています。盆・正月や冠婚葬祭だけでなく、お墓や仕事に至るまで門中が重視される沖縄。では沖縄の門中とは一体どんな制度なのでしょう?

門中の制度をものすごくわかりやすく説明してみる

門中には、一般的な血族制度とは異なる沖縄ならではの特徴があります。そのすべてを説明するととても難しいのですが、ものすごくわかりやすく説明するならば「分家をしても永久に関係が続く血縁関係のある共同体」となります。

一般的に分家をすると本家から離れ、新しい共同体をつくります。本家と分家は血縁関係を共にする共同体であることは変わりませんが、先祖供養などにおいては分離して行うのが一般的ですよね?ところが沖縄ではこの部分が大きく違います。

沖縄でも結婚などによって一族を離れれば分家となり、新しい門中を作ります。ところが分家をしたからといっても、先祖供養など宗教的な儀式などにおいては実家の門中との関係が続きます。つまり「分家をして新しい門中を作ったとしてももともとの門中とのつながりは永久に続く」というのが、沖縄の門中制度というわけです。

沖縄では結婚して分家する時に本家の神様を分けてもらう

沖縄は先祖崇拝がいまだに根強く残っている地域です。ご先祖様は7代経つと生まれ育った土地の神さまになると考えられていて、それまでは家の守り神として大切にされています。

でもこの考え方だと「ご先祖様の数だけ神さまがいる」ということになりますから、神さまに対する祀りごとは年を経るごとにどんどん増えていきます。しかも女性は結婚した後も実家のご先祖様の供養をする必要があり、嫁ぎ先の神さまと合わせると2倍の数に膨れ上がります。

今では車という便利な移動手段がありますが、昔はそんな便利な道具はありませんから神さまへのお祈りのために実家に出かけたり墓参りに出かけるだけでも一苦労です。しかも結婚して子育てにも追われるようになると、畑仕事以外にも家事や育児をしなければならなくなります。そんな沖縄の主婦たちが頼りにしていたのが、台所に祀られている「ヒヌカン(火の神)」です。

ヒヌカンは、非常に便利な神様といわれています。どんな神さまにも直接話をすることが出来る神さまといわれていて、土地の神さまに対しても先祖神様に対しても話が出来ます。しかもヒヌカンにお願いをすれば、どんなに離れた場所にいる神さまにも願いを届け出くれます。言い換えれば、「現代の携帯電話」のような役割を果たしてくれる神様というわけです。

そのため沖縄では分家をする際に、実家のヒヌカンを分けてもらいます。最近ではヒヌカンを祀っていない家も見られるようになったため、少しずつ忘れられつつある風習の一つとなってきています。

門中で共有するお墓【門中墓】

沖縄ではいまだに門中お墓を共有する文化が残っています。門中で共有するお墓のことを「門中墓」というのですが、門中によっては下の作り方や納骨の仕方、墓にまつわる風習や清明祭のやり方にも違いがあります。

一人前とみなされないと門中墓に納骨できない

様々なしきたりがある門中墓ですが、共通してみられるのが墓の脇に建てられた小さなお墓「脇墓(または仮墓)」です。

門中墓に納骨するには、「一人前であること」という前提があります。「一人前であること」の定義には門中によっても若干の違いがありますが、基本的には以下の①~③は一人前とみなさないとされています。

  1. 門中に不名誉をかけたホトケ
  2. 7歳以下の子供のホトケ
  3. 産褥で亡くなった女性のホトケ

「門中に不名誉をかけたホトケ」と「産褥で亡くなった女性のホトケ」が門中墓に入ることが出来ない理由は定かではありません。でも「7歳以下の子供のホトケ」に関しては、「たった一人で大人ばかりの門中墓に入らせるのは忍びない」という門中の人々の情が関係しているという説があります。そのため祖父母や両親が亡くなった時に納骨することが多いようです。たしかに祖父母や両親が一緒であれば、「どんなことがあってもあの世で子供を守ってくれる」という気持ちになれるのかもしれませんね。

仕事でも門中のつながりは大切

門中同士の結束が強いというのは、なにも冠婚葬祭や宗教・先祖供養に限ったことではありません。門中での繫がりは仕事上でも重要とされていて、沖縄ビジネス界ではどこの門中に属しているのかということが今でも重視されるシーンがあります。

私自身は本州出身のためこうした繫がりで得をしたという経験はありません。でも沖縄出身の友人の中には、「やっぱり門中での繫がりは大切にしないといけないなあ」と感じさせられたある出来事があったそうです。

友人は大学卒業を機に上京し一般企業に就職したのですが、たまたま取引先に沖縄出身者がいたため、ある時親睦を深める目的で一緒に飲みに行ったそうです。実はこの時、友人は取引先となかなか良い条件で契約がもらえないことに悩んでいたようで、少しでも問題解決につながればという想いもあって飲みに誘ったのだそうです。

最初は同じ沖縄出身者であるとはいっても、お互いにビジネス上の付き合いでしかありませんから固い内容の会話が続いていたのだそうです。宴席も進みそろそろお開きにしようと考えていた時に、たまたま相手から出身地を訊ねられた友人。素直に答えると、相手も同じ地域の出身であることが分かったそうです。しかもよくよく話してみると、同じ門中の出身であることも分かったそうです。

「沖縄から遠く離れているのに、こうして同じ門中の人間と会うことが出来るなんてすごいな」「それならこれからお互いに協力して頑張っていこうな」とお互いに話し、その場を別れたそうです。その後何かと取引の窓口として同じ門中出身者が対応してくれるようになり、無事に契約の方も良い条件でまとまったのだそうです。

「こんなことが本当にあるの?」と私自身、この話を友人から聞かされたときに思ったものですが、長く沖縄に住んでみると門中のつながりは沖縄のビジネスにおいては欠かせないつながりなのだということを強く実感しています。

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